ふたつの結婚が交わり、何度も鳥が飛ぶ(物語を乗せて)。



先輩と同級の女の子が結婚し、俺はモリッシーのレコードを持って出かけた。ライブハウスでは祝福の音楽ばかりがかかり、程良いシャッター音と、愛に導かれるままの音程が揺らぎとともに、俺に語りかける天使がいた。

「とびっきりのエンドレスワルツはトゥーシューズを履かずとも、踊れるのかもしれない」

そう歌ったのは韓国のシンガーだったか、日本のラッパーだったかは忘れたが、天使の姿をして俺の前に現れた。少なくとも、俺の前には。

モリッシーのレコードに描かれた子どもは、アナーキーズムを掲げ、俺たちを啓蒙している。「結婚とは水で薄めた恋ではない。子供にかける毛布のようなものかもしれない」これはもはや啓蒙とは言わず、詩に値すると思うが、俺の左手の薬指は光り続け、写真を撮る人々を助けた。

Yさんは俺を待ち、エマも俺を待つ。帰ってくると笑いかけてくるのはどちらが先か、そんな楽しみが俺を待つ。結婚して2年が経ち、エマが立とうとはまだしていない。今年はプクプクと大きくなったエマが、湯船を湯を一気飲みしふたりの記念日を祝福した。慌てる俺たちをよそに、酔っぱらいのおじさんのように照れ、そしてむせた。笑 俺はお礼に「あいつらがやってるバーは全部嘘だぜ」と岡村靖幸の真似をしながら展示に付随する違和感に関してのギャグをしてみせた。エマは泣きながら笑う舞台女優のようで、既に何かの片鱗を見せたが、俺はそれは大袈裟だと思った。いまや舞台の上は特別ではなくなってしまったし、特別な舞台は自分で用意するしかないのだから。エマは言わんとすることを感じ取り、俺の乳首を加えながら「ミルクが出ない」と言った。上出来だ。


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