素潜り旬の『LES ANGES DÉCHUS(堕落天使、またの名を天使の涙)』

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友人を偵察することに食傷気味になっていた俺は、知人の偵察に切り替えて数日が経つ。もうどこかに消えた人々は皆チノパンを履いていて、俺はこれは綿パンだったら助かったんじゃないか。そう思った。グラシェラ・スサーナが歌うアルゼンチン・タンゴに勃起しながら、苦しみを感じている。

「ある日」
この人がこの場所にいなければ、俺はどうなっただろう。もしかすると、火が上がったんじゃないか。燃え上がるとは、また違う。だけどこの人、性別を明かしてしまうと彼は、男の踊り子だったのだが、右耳が鎖で繋がれていて、クルっと回るたびに、右耳から血が流れていた。彼の肩は血だらけで、彼の右半身は血塗れで、左半身には飛び散った血がかかっていた。俺は「綺麗だ」そう言って彼に近づき、右耳を引きちぎった。そうして自由になった彼と踊った。

「別の日」
俺は大きくなったエマとYさんと公園に来ていて、遊べる場所をと見渡すと、ジャングルジムの上に男の踊り子だった彼がいた。彼は面影をなくし於母影をなくし、内なる自分とただ向き合っているように見える。しかしながら、俺が「そんなこと意味ないよ。おまえは今と向き合いながら芸事をした方がいいのに」そう助言すると消えてしまいそうで、何も言えなかった。

「今日」
芸事を、肝心なところが抜けているもののことだと言うならば、それは性別だって。そんな伝え方を彼はしていた。俺は、合ってるだとか間違っているかとかは抜きにして、彼に芸事を生き様だと思わない方がいいと、今度は口に出して言う。そうするとやはり前に思った通り、消えてしまった。知人の偵察とは言えないなこれは。干渉している。