素潜り旬のブエノスアイレス(5/11 朗読用テキスト)

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お母さんのプッシーから産まれたかも曖昧なポエジーは、プッシャーから授かったのか?右の頬を切り裂けばアポロンの白い粉がふわっと舞い、親愛なる二酸化炭素と反応してキリキリマイ。右腕を切り落とせば、龍の唾液が滴り落ち、レスリー・チャンが死ぬ前にこぼしたことなんかを考えたりした。

俺とおまえはアンバランスなトカゲが柱を登るように行ったり来たり。ブエノスアイレスにはジャズクラブなんてなく、皆タンゴをジャズだと思っているようだ。そこで俺はジャズを聴き、トニー・レオンのように前髪を整え、つまりはタンゴをジャズだと思うようにした。

右耳はデートコース。左耳はドレスコード。右目でジャズを。左目でタンゴを。

暖かくなって来たら、持ってきたアロハシャツを着た。涼しくなれば、露店で買ったジャケットを羽織った。ビーフステーキを毎晩食べたせいで、臭いは数日消えずにいる。だがそんなアジア人、俺たち以外いない。引き寄せ合っては遠ざけ、やり直す事について日夜考えたが、正直、想い出に飛び込めば俺たちはいつだって会えることに気がついたんだ。新しい日などむしろ悪くなるばかり。互いに一方的な喜びを得ることが幸せだって、そう信じたりしている。おまえもそうだろう。そうだよな。だってこの前、おまえに会った時…

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