甘い鳥を見つける

エマが甘い鳥を見つけた。俺は躁と鬱の狭間で寝込んでは暴れまわっている。このまま狂いそうな、俺はどこへでも行ってしまいそうな時、エマは甘い鳥を見つけた。


食べるまでもなくこの甘い鳥の鳴く際にたれる涎は俺が偽善でさえも愛であると思えるほどで、甘い鳥はあえて俺たちに見せつけていた。

布団から這い出たのは、その時である。いや、それまでは布団にいたというわけではない。俺はどこかにいた。どこかにいてしまっていたのだが、エマは常に近くにいて、甘い鳥を見つけることによって連れてこられたのだ、俺は。ああ、このまま、甘い鳥がいる場所に行けばよいのだろうか、わからない。それこそわかってしまってよいのだろうか、考えるまま、その場にいてしまった。それがよくなかった。だからエマは甘い鳥を見失い、俺は布団から這い出たところで止まっている。エマが甘い鳥をふたたび見つけるまで。