New “JOKER” and Me



割り当てられた動きを知らされないホテルマンは眉毛を殆ど刈ってしまった。それは台詞だけでは足らず目立とうとしたからで、それに答えるかのように助監督は俺に「中国を話してくれ」と言った。

『ジョーカーへの憧れ』
眉毛を刈って戻った時、妻は驚いて噴き出し、エマは大きく泣いた。俺はもう落としてしまおうとしたが、必死に妻は止めた。「他の役が出来ないよ?」
「俺はジョーカーだって…」
口角を無理やり両親指で斜め上に引っ張ってみせると、洗顔時に泡だらけになっただけでピエロを連想し泣くエマは嘘のように笑っている。そして妻が涙を流したように見えた。

ホアキン・フェニックスは人生の喜びを謳い、悲劇は喜劇のためのbetだと言う。俺は監督からの指示に従い、喜劇は悲劇へのbetだと、つまりは日本語と英語を話した。そしてショーケン・メソッドで追悼し、やり直しを喰らうも次は上手くやり、相手役と親指を出し合って別れた。