獣を退けるには


とんでもない臭気で目を覚ますと獣が俺にまたがっていた。東京帰りの疲れで幻覚を見ていたのか、それとも夜の裏側に来てしまったのか、俺には見当もつかなかったが、とりあえず詩を朗読して抗ってみた。しかし、事は大きくなるばかり。俺の右腕は食いちぎられていた、ジーザス。いやペーソス。俺の乳房は反対だけ光るんだ。


ポエトリーリーディングをしてみることにした。獣は多少怯んだが、それでも俺は左腕を食いちぎられた。愛をむき出している監督にカットをかけられたことを思い出した。俺は物凄い速さで両腕を動かしたせいである。ああ、その報いだ。


そしてギターを弾いていた。七尾旅人は子をステージに上げるが、俺は獣をステージに上げることにしたのだ。暴れ狂う獣は俺の両足を食いちぎるも、俺は音が常に鳴っていることに満足しながら言葉を発している。パティ・スミス、彼女のようなパフォーマンスにならないよう気をつけながら。

そして良きタイミングでギターを捨て、エマの言葉で朗読する俺がいた。童子返り。これこそが、相手に聞かせることだった。