香港製の百均のイヤホン
夜が埋め尽くされてから、何に埋め尽くされたか気がついた。
本当の事を言っておきたいのだけれど、言わないことにした。それはチャプターが変わる瞬間、ふつうに観てたら分からない瞬間。そのふつうが何なのか考えてみたけれど、俺は機械的な事だろうという予測しか出来ない。
「マイルスがうちに来た」
この「うち」というのは俺の家、つまり素潜り邸ではなく、内に来たのだ。香港製の百均のイヤホンで聴いたマイルスは、極端なプリミティブの香りがする。デュークエリントン楽団のアレみたいな音がしながら、木製のテーブルを叩いているような音がする。エマに聴かせたら喜ぶだろうなあ。エマは木製の音が好きかもしれない。それは希望的観測だろうけど。
「アルマジロの身体的交歓」
もエマは好きかもしれない。笑いながらしばく竹中直人と同じくらい。