大東洋とエクリプス(ベイビー)


サンセット通りを歩く前に教祖と話していた俺は、いかにも自己啓発家的な風貌で相槌をうっていた。


「マルチュク青春通りだったかも」
チェリーパイが売っているカフェで女を見つけたが、爆弾を抱えている。会うたびに服装が派手になる。というよりかは周期的に色が変わり、いつしかディミアンチャゼルが喜びそうなジャパンクールな鈴木清順の女性となっていた。単色を配置する行為によって、画に規則性を生み、ワルシャワをワルソーと呼ぶか否かで揉める前日ピザ屋の彼女をドライブに誘った。

「その名はエマ」
ラスプーチンと書かれたスプーンではスープは救えない。ギリシャヨーグルトじゃ腹は下せない。商いを終えて家に帰ると、エマが飯を作って待っていた。
「光学的なサボタージュはあなたになにも見せないわ」
ワイシャツは雨でビショビショになっていたが、中のシャツだけは乾いていた。それが俺にこう言わせた。
「会話には甘みがある。この甘みが何に近いかを考えることが、相手の感情を理解することに近づくんだ」
そうだとしても、そう前置きをしてエマは言う。
「相互理解は、なしえない」
ワイシャツは雨でビショビショになっていたが、ブラックデニムは乾いていた。中のシャツは汗で濡れていた。

「メイビーって何度も言う」
大東洋とエクリプスと名乗る二人のギャングと会ってから、俺は加速度的に下腹部の禍福を映像で見せれるようになっていた。つまりはiPadを通じて腹パンされる様子をライブ配信しているのだ。大東洋は俺の腹を強めに殴り、エクリプスは大げさに俺の腹を蹴り上げた。これが3クールほど続き、意識が朦朧としてきた頃、ゴタンダ姐さんが現れ何も言わずに消えたが、その後半パンでやってきた我がボスが俺にこう言った。
「メイビー」
意味は分からなかったが、うまく笑えた。

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